叶わぬ恋だと分かっていても
「タツ兄……荷物持ってやるって言ったけど……。まだ松葉杖取れてないじゃん……」

 さっきだってちょっと頭を下げただけでぐらついた癖に、よくもそんなセリフが言えたものだと思ったら、何だか可笑しくなってきてしまった。

「そんな人に荷物持ちなんて任せられません」

 きっと、荷物を持ってくれると言うのは、私を見かけて……どう声をかけていいか迷った末の、タツ兄なりの言い訳みたいなものだったんだろう。

「くそっ。ホント、僕は何でこんなに役立たずなんだろう」

 クスクス笑いながら告げた私に、心底悔しそうにタツ兄が眉根を寄せるから、私はタツ兄に首を振って見せた。

「ううん。その気持ちだけで十分嬉しかったよ?」

 ずっと誰かにこの荷物を、少しだけでもいいから肩代わりしてあげようと言って欲しかった。

 実際にはそれが出来ないのだとしても。
 タツ兄がそう思ってくれたことこそが――。

 日々の看病ですり減った私のささくれだった心には、凄く凄く有難かったの。

 ――ねぇタツ兄。ホントだよ?
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