叶わぬ恋だと分かっていても
***
タツ兄とのお付き合いを始めてすぐ、私はなおちゃんの連絡先をスマートフォンの中から削除した。
その際、残ったままになっていた着信履歴や発信履歴もオールリセットして……。
近所のお兄ちゃんという意味合いで『タツ兄』と登録していた《《恋人》》の名前を、『波野建興』と、彼のフルネームで登録し直した。
日を追えば追うほど着信履歴も発信履歴もお父さん、お母さんを追い上げる勢いで『波野建興』で侵食されていく。
そのことが何だか照れ臭くてたまらなく面映ゆいの。
結局あれっきりなおちゃんからは連絡が入ってこない。
そのことを最初のうちこそ悲しく思っていた私だったけれど、タツ兄との日々のなかで段々気にしなくなっていった。
それに――。
***
「お母さん、調子どう?」
「うん。今日もとっても元気よ。お昼過ぎにね、お父さんがアイスを買って来てくれたんだけど……お母さん、丸々一個一人で食べられちゃったの。すっごく美味しかったんだけどね、お母さん、本当はバニラアイスよりかき氷系のアイスの方が食べたかったのよ。――せっかく買って来てくれたから言えなかったんだけど」
タツ兄とのお付き合いを始めてすぐ、私はなおちゃんの連絡先をスマートフォンの中から削除した。
その際、残ったままになっていた着信履歴や発信履歴もオールリセットして……。
近所のお兄ちゃんという意味合いで『タツ兄』と登録していた《《恋人》》の名前を、『波野建興』と、彼のフルネームで登録し直した。
日を追えば追うほど着信履歴も発信履歴もお父さん、お母さんを追い上げる勢いで『波野建興』で侵食されていく。
そのことが何だか照れ臭くてたまらなく面映ゆいの。
結局あれっきりなおちゃんからは連絡が入ってこない。
そのことを最初のうちこそ悲しく思っていた私だったけれど、タツ兄との日々のなかで段々気にしなくなっていった。
それに――。
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「お母さん、調子どう?」
「うん。今日もとっても元気よ。お昼過ぎにね、お父さんがアイスを買って来てくれたんだけど……お母さん、丸々一個一人で食べられちゃったの。すっごく美味しかったんだけどね、お母さん、本当はバニラアイスよりかき氷系のアイスの方が食べたかったのよ。――せっかく買って来てくれたから言えなかったんだけど」