叶わぬ恋だと分かっていても
(裏地が太ももにまとわりついて気持ち悪いな……)

 そんなことを思いながらワンピースのスカート部分をつまんで眉根を寄せていたら、
「えっと……もしよかったら……その……シャワーとか浴びる?」
 ヒョコッと奥の間から顔を覗かせたタツ兄に問い掛けられた。

 このところ自分はシャワーばかりで、いま浴槽にお湯が溜まっていないんだ、と申し訳なさそうに付け加えながら、「それでも熱いお湯を浴びると違うんじゃないかと思って」とタツ兄が言うから……。

 何だかそれってとっても恥ずかしいお誘いに思えてしまった私だ。

 だって、なおちゃんとはお風呂と性行為は必ずセットだったから。

(タツ兄にはそんな下心ないのかな?)

 なおちゃんとの数年間で、すっかりエッチが生活の一部みたいになってしまっていたはしたない私は、タツ兄相手にそんなことを思ってしまう。

「タツに……、たっくんは……入らない、の?」

 身体が冷えている云々(うんぬん)で言えば、彼もじゃないかな?って思った私だったけど、思い返してみれば、タツ兄は実際レインコートを脱ぐとそれほど服は濡れていなくて。

 髪の毛だけが濡れそぼっていたのはレインコートのフードから滴り落ちた水滴がタツ兄の顔を濡らしていたからだろう。

 むしろ、さっき私を抱きしめてくれた時に私の服から水気を吸ってしまったかも知れないくらい。

「僕は……平気だよ」

 言われて、私は少し考えた。
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