叶わぬ恋だと分かっていても
 照れ屋さんで可愛かったり……物凄く意地悪だったり。どれが本当のたっくんなんだろう?

「あ、あの、でも」

「恥ずかしい?」

 当たり前だよ。
 そんなの分かってるくせに。

 涙目で彼を見下ろしたら、たっくんがニヤリと笑った。

菜乃香(なのか)、知ってた? このTシャツ、薄手で白無地だからさ。……菜乃香の可愛いココ、透けて見えてるんだ」

 言うなり布地ごしにたっくんが私の胸をパクリと(くわ)えた。

「ひゃ、あ、んっ」

 (じか)に触れられるほど直接的ではないけれど、どんどん布が湿り気を帯びて、敏感な胸の先にたっくんの熱を伝えてくる。

 Tシャツ越し。ツンと勃ち上がった乳首を舌先で転がされるのは気持ちいいけど、何だかすごくもどかしい。

 気が付けば、私はたっくんの後頭部をギュッと抱えるように抱きしめていた。

「や、んっ、たっくん……、くすぐったい」

 本当はくすぐったいのとはちょっぴり違う。

 気持ちいいけどアクセル全開じゃないから、熱がどんどん内側にこもってくる感じ。

「菜乃香、(すそ)、自分で持てる?」

「裾?」

「そう。脱ぐのは恥ずかしいんだろ? だから」

 たっくんは脱がなくてもいいからTシャツを上にたくし上げろと言いたいみたい。

 それって、結局脱ぐのと大差ないと思うのだけれど――。

 そんな風に思うくせに言われるがまま。
 熱に浮かされた私は、たっくんの頭から手を放して自らTシャツの前をまくり上げた。
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