叶わぬ恋だと分かっていても
 自分で脱ぐのは恥ずかしくて……大きなベッドに腰掛けて、シャツワンピースのボタンに手をかけたまま動けなくなってしまった私を、緒川(おがわ)さんがタオルを手にしたまま、すぐそばに(ひざまず)いて、じっと見上げてくる。


「あ、あの……」


 何も言われず、ただ見つめられているのが恥ずかしくて、すがるような視線で緒川さんを見つめたら、「恥ずかしい?」って問いかけられて。

 当たり前のことを聞かないでくださいって言いたいのに、そんな言葉さえ緊張して出てこないの。

 仕方なく小さくコクンとうなずいたら、「じゃあ俺が脱がせてもいい?」とか。

 嫌だって言ったら諦めてくださるのですか?


「あ、の……やっぱり」

 ――脱ぐのは無理です。

 そう続けようとしたら

「脱がない、はダメだからね? 濡れたままでいたら風邪ひくでしょ?」

 先んじてそう逃げ道を封じられてしまって、私はパクパクと口を(あえ)がせた。


「もしかして、脱ぎたくないって言う気だった?」


 クスッと笑われて、図星だったから真っ赤になる。

 緒川さんは単純に私の身を案じてくれているだけみたいなのに、私ひとり変に意識してるみたいで恥ずかしい。
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