叶わぬ恋だと分かっていても
 本来ならば先に済ませなければいけなかったたっくんのご両親――波野家(なみのけ)――へのご挨拶や、両家の顔合わせ。それから式場を押さえての挙式や入籍などは、お母さんの四十九日が済んでから動こうと二人で話した結果、どんどん後回しになって。

 お母さんが亡くなったのは六月末だったのに、あれやこれやと片付けていたら、思いのほか時間がかかってしまった。

 気が付けば、私とたっくんのことが正式に全て済んだ頃には二月初旬になっていた。

 その間、たっくんは『せっかくの準備期間だ。婚約者気分を味わおう?』と言って、私にダイヤの付いた婚約指輪を贈ってくれて。

 私はウェディングドレスを着た後にエンゲージリングを薬指にはめるという、一般的な花嫁さんとはちょっぴり順序がごちゃごちゃなお嫁さんになった。

 でも――。

 挙式も何もかも全てが終わった今、私の左手薬指にはたっくんとおそろいのシンプルな結婚指輪(マリッジリング)がはまっている。
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