叶わぬ恋だと分かっていても
『そっか、良かった。俺は最近ちょっと不調でさ。昔みたいに菜乃香の顔見たら元気になれそうな気がして……今更だし……すげぇ迷ったんだけど我慢出来なくて電話してみた』
聞いてる?と付け加えられて、私はすぐにはリアクションが取れなくて。
『なぁ菜乃香。色々思ってることあるだろうけど……一度会えないかな? 頼むから俺を助けると思って顔見せてくれよ。俺、菜乃香がいないと駄目なんだ。――会いたい』
弱気なその口調に、私は(ああ、そう言えばそう言う季節だもんね……)と思い至った。
なおちゃんは数年前、本庁の【都市開発課公園みどり班】から【ごみ処理場第一工場】へ配属になって、副工場長に任じられて以来、人事異動の頃になると体調を崩すようになっていた。
副工場長は下と上との板挟みでしんどいのだと、何度も異動願いを出していたのだけれど。
女性関係はともかくとして、責任感が強くて器用で……仕事は出来る人だったのでなかなか聞き届けてもらえなかったみたい。
辞令が下るたび、異動がないと知った後のなおちゃんは鬱気味になって、人との関わりを断ち、仕事も有給で休んだ。
私にも会いたくないという時期があったり、そうかと思うと突然顔が見たいと言い出したりと精神的に波があって。
恐らくまた今年もなおちゃんは異動が叶わなかったんだろう。
でも――。
聞いてる?と付け加えられて、私はすぐにはリアクションが取れなくて。
『なぁ菜乃香。色々思ってることあるだろうけど……一度会えないかな? 頼むから俺を助けると思って顔見せてくれよ。俺、菜乃香がいないと駄目なんだ。――会いたい』
弱気なその口調に、私は(ああ、そう言えばそう言う季節だもんね……)と思い至った。
なおちゃんは数年前、本庁の【都市開発課公園みどり班】から【ごみ処理場第一工場】へ配属になって、副工場長に任じられて以来、人事異動の頃になると体調を崩すようになっていた。
副工場長は下と上との板挟みでしんどいのだと、何度も異動願いを出していたのだけれど。
女性関係はともかくとして、責任感が強くて器用で……仕事は出来る人だったのでなかなか聞き届けてもらえなかったみたい。
辞令が下るたび、異動がないと知った後のなおちゃんは鬱気味になって、人との関わりを断ち、仕事も有給で休んだ。
私にも会いたくないという時期があったり、そうかと思うと突然顔が見たいと言い出したりと精神的に波があって。
恐らくまた今年もなおちゃんは異動が叶わなかったんだろう。
でも――。