叶わぬ恋だと分かっていても
 私はもうなおちゃんとお付き合いしていた頃のようにフリーではない。

 私だけを見てくれて、私だけを愛してくれる、建興(たつおき)くんという素敵な旦那様がいる。

 たっくんは、なおちゃんが私に不誠実なことをして落ち込んでいた頃に、私の前へ現れた救世主のような人。

 そればかりか、大好きなお母さんが亡くなった時、ずっと私のそばにいて、折れそうな心を支えてくれた大切な人だ。

 今更なおちゃんなんかに惑わされたりしない。

 私はそんな決意を込めて、「なおちゃん。私ね、先月結婚したの。だからもうなおちゃんとは会わない。申し訳ないけど二度と連絡してこないで?」と告げて通話を切った。

 なおちゃんから連絡がないのをいいことに、ずっと未練がましく着信拒否出来ずにいたなおちゃんの電話番号を、すぐさま拒否リストに加えると、ほぅっとひとつ吐息を落とした。


 そのせいで《《あんなこと》》になるなんて――。
 そうなると分かっていたら、私はもう少し上手く立ち回れたのかな?
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