叶わぬ恋だと分かっていても
「あの……突然割り込んですみません。菜乃香(なのか)の夫です。夏美さん、でしたっけ? ……えっと、今の話は……本当なんですか?」

 オロオロと視線の定まらない私に変わって、たっくんがスピーカー通話を解除して電話を耳に当てた。

「はい、はい。ああ、それで……。ええ、今夜が通夜で葬儀は明日の――」

 ねぇたっくん。今話しているのは誰のお通夜で、誰の葬儀のことなの?

 分かっているけれど、その言葉はまるで真実味を(ともな)わないままに私の上を通り過ぎていく。

 ややして通話を終えたたっくんが、私を抱きしめたまま言った。

緒川(おがわ)さんが亡くなったのは事実みたいだよ、菜乃香。今夜が通夜らしいんだが、夏美さんと一緒に行ってくる? 夏美さんが菜乃香に伝えたいことがあるって。……菜乃香が望むなら俺も一緒に付いて行くし、もちろん嫌だって言うなら断ることも出来るけど……」

 たっくんの言葉に、私はしどろもどろ。
 「……待ち合わせ場所は……どこ?」と問いかけていた。
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