叶わぬ恋だと分かっていても
 それが男女の関係に発展したのは、どうやら私のお母さんが病気になって、なおちゃんと会える機会がガクッと減った辺りかららしかった。


「下の子がね、ミニーのミニカが好きで。誕生日に可愛い猫の描かれたラッピングカーのミニカを欲しがって。なおさんには関係ないことなのに一緒に色々探し回ってくれる姿が本当に素敵に見えて」

 なっちゃんの旦那さんは「車のおもちゃなんて何だっていいじゃん。適当に誤魔化せよ」と言って取り合ってくれなかったらしい。

 なおちゃんはそれを、一緒になって色々探してくれたんだとか。

 私はそこで、母の病気でずっと会えなかったとき、久々のデートで彼と一緒に(くだん)のミニカを探したことを思い出した。

(そっか、あれ、なっちゃんの子供さんのためだったんだ……)

 ――あの日感じた違和感の正体はこれだったのね。

 一緒にいた時にも、なおちゃんの心の中には既に別の女性がいたんだと思うと、何だかモヤモヤとした気持ちがくすぶって。
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