叶わぬ恋だと分かっていても
職場からなおちゃんの無断欠勤の連絡を受けたご家族が彼の消息を探して……やっと見つけたのが旧家で。
第一発見者が最悪なことにお子さんだったということみたい。
彼の携帯電話は電源が切られているのか圏外になっていて、結局見つけられなかったんだとか。
きっとそれがなおちゃんの、私たち不倫相手や奥様に対する最後の優しさだったのかな。
電話が残っていて……変に着信やメッセージが届いても……自分が旅立った後では証拠を隠滅することが出来ないから。
バレなければ浮気はしていないのと一緒。
奥さんは薄々勘づいていらしただろうけれど、なおちゃんは奥様に最後の最後まで決定的な証拠を掴ませなかったんだと思う。
***
「なおさんは……ここ数年異動の時期にはいつもあんな感じになってらしたんですよね?」
相当弱っていたのかな。
リストカットを繰り返すようになってからのなおちゃんは、そんなこともポロリとなっちゃんにこぼしたらしい。
その度に、私に支えられて何とか持ち堪えていたことも。
「ねぇ、菜乃香さん、どうして……」
そこでなっちゃんが一瞬だけ私を責めるみたいな口調になって……ハッとしたように唇を噛み締めて言葉を飲み込んだ。
きっとなっちゃんは『どうしてそのことを知りながら、この時期になおさんのそばにいてくれなかったのですか? どうして彼の手を放せたんですか?』とでも言いたかったのかな。
第一発見者が最悪なことにお子さんだったということみたい。
彼の携帯電話は電源が切られているのか圏外になっていて、結局見つけられなかったんだとか。
きっとそれがなおちゃんの、私たち不倫相手や奥様に対する最後の優しさだったのかな。
電話が残っていて……変に着信やメッセージが届いても……自分が旅立った後では証拠を隠滅することが出来ないから。
バレなければ浮気はしていないのと一緒。
奥さんは薄々勘づいていらしただろうけれど、なおちゃんは奥様に最後の最後まで決定的な証拠を掴ませなかったんだと思う。
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「なおさんは……ここ数年異動の時期にはいつもあんな感じになってらしたんですよね?」
相当弱っていたのかな。
リストカットを繰り返すようになってからのなおちゃんは、そんなこともポロリとなっちゃんにこぼしたらしい。
その度に、私に支えられて何とか持ち堪えていたことも。
「ねぇ、菜乃香さん、どうして……」
そこでなっちゃんが一瞬だけ私を責めるみたいな口調になって……ハッとしたように唇を噛み締めて言葉を飲み込んだ。
きっとなっちゃんは『どうしてそのことを知りながら、この時期になおさんのそばにいてくれなかったのですか? どうして彼の手を放せたんですか?』とでも言いたかったのかな。