叶わぬ恋だと分かっていても
***


 なっちゃんと別れた後、私は一人、あてもなく車を走らせて。
 なおちゃんと行った場所をあちらこちら何の目的も脈絡もなく彷徨(うろつ)いた。

 途中で車を停めてなおちゃんに電話してみたけれど当然のように圏外のアナウンスが流れるばかりで応答なんてなくて。

 私は、この()に及んでやっと。
 本当に彼はこの世からいなくなってしまったのかな?とぼんやり考えた。

 たっくんに連絡も入れないままあちこち動き回って……ぼんやりとした頭で帰宅したら、二十三時を過ぎていた。

 そんなだったのに、たっくんは寝ないで私の帰りを待っていてくれて。

 それが何だかたまらなく申し訳なくて……消えてしまいたくなった。

菜乃香(なのか)、お帰り」

 何故こんなに遅くなったの?とかそういうことは一切聞かないたっくんにギュッーと抱き締められて初めて。
 私は声を上げてわんわん泣いた。

 私はこんな優しい人を差し置いて……あのとき私がなおちゃんの求めに応じていたら或いは彼は死なないでいられたの?とか。

 あてもなくなおちゃんとの思い出が詰まった場所を転々と彷徨(さまよ)うように車を走らせながら、このままどこかへ突っ込んで、なおちゃんの後を追ってしまおうか、とか。

 ご飯を食べずにいたら何日くらいで死ねるんだろう?とか。


 そんな不毛な想いに捕らわれ続けている自分のことも、許せなかった。
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