叶わぬ恋だと分かっていても
*転がり落ちるふたり
 緒川(おがわ)さんと初めて肌を合わせたあの日以来、私と彼はまるでタガが外れたみたいに毎日毎日ほんの少しでも時間があれば身体を重ねるようになっていた。

 2人が逢瀬(おうせ)を重ねるには、後部シートがほぼ外からは見えないスモークガラス仕様の彼のワンボックスカーはとても有用で、私たちは昼休みを共にそこで過ごし、ほんの数十分足らずのその時間でさえも惜しむように身体を求め合った。

 夕方も仕事終わりには彼の車で2時間ばかり、他愛(たわい)のないお喋りをしながら、肌を合わせる。

 それを仕事のある日にはほぼ毎日。


 恐らく緒川(おがわ)さんは私が今まで付き合ってきたどの男性よりも性欲が強くて、そうしてどの男性よりも上手に私を抱いてくれた。

 恋愛経験値の低い私が、彼の手練手管に溺れてしまうのなんて容易いことで――。

 その腕に抱きしめられただけで、彼に飼い慣らされた(みだ)らな身体は、緒川さんを求めて濡れてきてしまう。


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