叶わぬ恋だと分かっていても
 毎日昼に夕に抱かれることが当たり前になっていて、生理が始まると抱いてもらえないことに悶々としてしまうぐらい、私は彼との情事に溺れていた。


 緒川さんはよく、自分はイケなくても、菜乃香(なのか)のなかに受け入れてもらえるだけで幸せな気持ちになれる、と言ってくれて。

 私は彼が安らぐことが何よりも嬉しくて、求められれば嫌と言うことなんて有り得ないと思うようにさえなっていた。

 休日にも土日のどちらかには必ず会いにきてくれて、夜も毎日2時間ぐらい電話で話す。

 およそ今まで付き合ってきた、彼氏にですらされたことのないような手厚さで,私は緒川(おがわ)さんに愛されていた。

 妻帯者であるはずの彼が、家にいてさえもそんなことができるのは何故なんだろう?と考えたことがないわけではない。

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