叶わぬ恋だと分かっていても
*転職を機に
「就職、おめでとう」

 なおちゃんにそう言われて、私は淡く微笑んだ。

 職場が離れてしまった私たちは、当然だけど今までみたいに昼休みに会うことは出来なくなってしまった。

 そのことを寂しく思っているのは、私だけかな。


 なおちゃんは案外気にしていなさそうに見えて、自分から環境を変えたくせに何だかモヤモヤしてしまう。


 私の仕事が終わるのは17時。
 なおちゃんの定時より15分ほど早い。


 本社の方ではサービス残業が当たり前になっているみたいだけれど、幸い私が配属されたのは本社と徒歩5分ぐらいの距離にある工場事務所のほうで。

 そちらは基本的に残業なしで帰れるみたいでホッとする。


 職場が離れて、昼休みに会うことができなくなってしまった私たちは、仕事後か、休日に会うしか出来ないから。

 残業が入ってしまうような職場だったら、毎日なおちゃんと会うことは不可能になってしまう。

 そんなのは寂しすぎると思ってしまって――。
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