叶わぬ恋だと分かっていても
 自分はそんな風に自由奔放なのに、なおちゃんは私が《《浮気》》をすることは許さないって言う。
 《《本気》》ならいいけどって言われても、私にはその違いがよく分からない。

 そもそもなおちゃんへのこの気持ちは浮気なの? 本気なの?

 私が結婚したいって思える相手ならば本気と見做すとなおちゃんは言ったけれど……だったら私の貴方への気持ちは本気ってことになっちゃうよ?

 貴方とは結婚なんて絶対無理だと――そんなのしてくれる気なんてさらさらない相手だと分かっているのに……。
 それでも「もしかしたら」という気持ちを捨てきれない私は大馬鹿者だ。

 なおちゃんはずるい人だと頭では分かっているのに、私は彼から離れることが出来ないの。

 きっと、彼のような浮気性の男性にはありがちなことなんだろうけれど、なおちゃんは女性の扱いがとてもうまい。
 それに、一緒にいるときは怖いぐらいに《《私だけを》》愛してくれていると《《錯覚させて》》くれるから。

 冷静な部分では、なおちゃんのこと、さっさと見切りをつけてしまわないと、って焦っているし、この恋に未来はないと分かっている。
 それでも尚、私はこの泥沼から抜け出すことができないのだ。

 結局のところ、私もなおちゃんと同類の最低な人間なんだと思う。

 このモヤモヤとした苦しみは、きっと奥さんを苦しめている自分へのささやかな罰。
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