叶わぬ恋だと分かっていても
「……いっ!」

 いきなり何するんですか!

 そう言いたいのに、緒川(おがわ)さんはまるでその先を私に言わせたくないみたいに言葉を被せる。

「あの、さ――。もし……今キスされたのが嫌だと思わなかったなら、誕生日プレゼントだと思って俺の彼女になってくれないか?」

 言うなり、唇を指先でなぞられて、私は言葉を失った。

 嫌だと思わなかったなら――?

 そう言えば私、びっくりはしたけれど嫌じゃ……なかった。それって……。

 今までただの上司ぐらいに思っていた、かなり年上――恐らくアラフォーの男性。

 背がすらりと高くて、いわゆるイケオジという部類に入るのだろうけれど、別に好みの顔ではなかったから。

 当然恋愛対象だなんて目で見たことはない。

 それなのにいきなり〝そういう目〟で見て欲しいと言われて、正直私はどうしたらいいか見当がつかなかった。
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