叶わぬ恋だと分かっていても
 ひとまわり以上歳の離れた私たちが、周りからどう見えているのかも気にならないぐらい、私はなおちゃんが大好きで。

 地元でくっつけないぶん、遠方に出ると一般的な恋人たちが普通に出来ることをこれ幸いと彼に求めた。

 腕を組んだり手を繋いで歩いたり。


 なおちゃんと人目を(はばか)ることなくイチャイチャ出来るのが嬉しくてたまらなかったの。



「小さくて……ちょっとだけユラユラ揺れる感じのデザインがつけてみたいな?」

 ショーケースの中をふたりで覗き込みながら、繋いだ手から伝わってくるなおちゃんの温もりに、言いようのない幸福感が込み上げる。


「だったらこれとかどう? 菜乃香(なのか)の誕生石だよ」

 小さな(しずく)型に加工されたサファイアが、耳元で揺れるデザインのピアスを指差されて、私は「綺麗」ってつぶやいた。

 店員さんがすぐにそれを取り出してくださって、透明なピアス試着棒の先に取り付けて鏡の前で耳に当ててくださる。

「あまり大きくないし、菜乃香(なのか)にとても似合ってると思うな?」

 なおちゃんがそう言ってくれたから、私は小さくうなずいた。


「これと、18金のボールピアスがあると便利だと思うよ」

 なおちゃんがそう言って、小さな金の玉が軸の先についたシンプルなピアスを勧めてくれて。

「仕事とかするのにあまり目立つのはって時なんかこっちにするといい。それから――」

「ふ、ふたつで十分だよっ」
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