叶わぬ恋だと分かっていても
『……なのちゃん?』

 急に黙り込んでしまった私に、お母さんの不審そうな声が掛かる。私はそれに押されるように、慌てて

「まっ、まだ付き合い始めたばかりだから……もう少し落ち着いたらっ」

 本当は付き合い始めて2年以上になろうかというのに、そんなこと言えっこない。

『わかった。で、直太朗だっけ? なのちゃんが飼ってるフェレットを預かればいいのね?』

 うちの家族はみんな生粋(きっすい)の動物好きだ。

 私がフェレットを飼い始めたと言った時も、お母さんがすぐに見に来て直太朗と遊んでくれた。

『ご飯とかどのくらいあげたらいいかとか……お母さんちっとも分からないから。そういうのはちゃんと分かるようにしておいてね?』

 言いながら、楽しみ、とお母さんが言ってくれたことにホッとしつつ。


 私は心の中で親不孝な娘でごめんなさい、と謝った。
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