とあるヒロインと悪役令嬢の顛末


……どうぞ、狭い部屋ですが、こちらにお掛けください。

今、お茶をお淹れします。

……



……あ、お祝いが遅くなってしまいました。
ご結婚おめでとうございます。
お優しく有能な皇太子妃殿下だと市井でも皆申しております。

丁度一年前くらいでしたか、素晴らしい結婚式だったと伺っています。


お幸せそうで、安心しました。



泣かないでください。
ご心配をおかけしたでしょうか?

そうですよね、急に居なくなってしまいましたもんね、ごめんなさい。
でも、あの時はそうするしかなかったのです。


そんなことありません!
エド…いえ、皇太子殿下と結ばれるべきは、妃殿下以外ありえません!

私は…確かに、恋かもしれないと思うことはありましたが、離れてみてそれは違うということに気がつきました。
知り合いすら誰もいなかった世界で、優しくしてもらって、勘違いしたんです。

皇太子殿下も、最初は私の話し相手になるよう皇帝陛下から命じられて、そうなさっていただけなのです。
妃殿下への気持ちに、嘘はなかったのです。


……正直に言います。
私の能力(ギフト)、『魅了』なんです。

えっ?ご存知だったのですか?
ああ…そうですよね。あまりに不自然な心変わりでしたから…

いいえ!意図して使っていたわけではないんです‼︎
本当です‼︎


信じて、くださるのですか?
……あ、あ、りが、とう、ございます…




……はい、泣いてる暇はないですね。
お忙しい妃殿下を、いつまでもこのような所にお止めする訳にはいきませんもの。
私に聞きたいことや、言いたいことがあるのですね。
分かっています。何でも伺いますし、正直にお答えすることを約束します。

妃殿下に憎まれても仕方のない私が、あんなに優しくしていただいた。

学園で酷い目に遭っても仕方なかったのにそうならなかったのは、皇太子殿下のお陰ではなく妃殿下のお陰です。
妃殿下がそうしてくださったことを、私は知っています。

ご恩を返すことになるわかりませんが、そのつもりでお話しします。







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