私のヒーロー。
 幾田春輝は同じ小学校の同級生だった。
 未那と友理奈が通っていた学校はそこそこの規模の小学校でクラスは1学年3クラス〜4クラスで大半の同級生は、“名前は知らなくても顔は見たことがある”とか“顔は知らないけど名前は聞いたことある”といった感じの子が多かったと思う。
 そんな学年の大体の顔や名前を把握してる小学校のなかで変な意味で学年で有名だったのが幾田春輝だった。
 未那も3年生の時と5年生の時に同じクラスになったことがある彼は地味で大人しくて無表情な子だった。
 もしこんな性格でもイケメンだったら良い意味で有名になれたのだろうけど、幾田春輝はお世辞にもカッコいいといえる顔ではなかったし女子をキュンとさせるような特技もなかった。
おまけに彼は全然笑なかった。クラスのお調子者とかお笑い担当の男子が面白いことを言っても彼は一切笑わなかった。委員会決めの時も「残ったやつでいい」と言って人気のない給食委員の仕事を自ら引き受けたり、クラブ活動も先生が選んでと言ってこれまた人気のない昔遊びクラブに入ってクラブ長をしていたらしい。
 そんな子どもらしくない彼を未那に限らず苦手とする同級生は多かったと思う。逆に常に冷めていて良く言えば大人っぽい彼も自分達のことを苦手としていたと思う。


 そんな幾田春輝のことを意識しだしたのは、未那が友理奈と共に私立の中学受験に合格して星陵女学園の中等部に入学した4年前の秋のことだった。
 その日、未那は星陵女学園の美術教師であり親戚のお姉さんでもあるなーちゃんこと小林菜々子の結婚式に参加していた。
 女子も惚れる女子である可愛いなーちゃんの選んだ相手は、男の人にしては背が低くて童顔の6歳年上の男の人だった。なーちゃんと同じくどこかの公立高校で美術部教師をしているらしいその男の人は優しそうだけど全然カッコよくなくて可愛いなーちゃんには不釣り合いだった。幸いなーちゃんも身長がそんなに高い方ではないから2人で並んでいたらそんなに気になりはしなかったけど旦那さんが170㎝もなさそうなことは見てすぐに分かった。
 でも、なーちゃんが幸せならそれで良いのかもしれない。そう思いながら未那は、全然お似合いではないカップルの式にを見ていた。
 でも、誓いのキスもケーキカットもブーケトスもなーちゃんはドレスも似合っていたし可愛くて絵になるけど隣の旦那さんは全然パッとしなかった。
 でも、こんな人でも彼はなーちゃんの選んだ人なのだから大丈夫だろうと未那は思っていた。
 だが、そんな未那の気持ちは結婚式の最後に踏みにじられることになった。
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