全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
***
「……川さん、……及川さん、聞いてます?」
「え、なに?」
ふと我に返り、声のするほうへ視線を向ければ、訝し気な表情で道長くんが私を見ていた。
「今日の及川さん、ダメですね。朝からずっとボーッとしてますよ?」
「ごめんなさい」
職場でこんなにも集中力が欠けるのは珍しい。
さっきから道長くんに何度か呼ばれていたみたいだが、気がつきもしないなんて。
原因は自分でわかっている。
あの日、魁が私の家に来ていろんな話をしてからだ。
私の作った料理を頬張り、おいしいと言いながら満面の笑みを浮かべていた魁の顔が頭から離れない。
花束を渡したときの照れた顔も。
あれから三日が経ったけれど、この症状はどんどん重くなっていて、今日なんて仕事にならない始末だ。
『どっちつかずのままなのは、その年下くんがかわいそうですよ?』
美知留ちゃんに言われた言葉も私にのしかかってきていた。
だけど今の私はあのときとは気持ちが変わってきている。
魁にノーという返事はできそうにない。
それくらい私の中で魁の存在は大きくなっていて、彼が差し出している手を取らなければ絶対に後悔すると確信した。
魁がこんなにも私の心を満たし、支えてくれていたのだと、ようやく気づいた私はのろまで大バカだ。
「……川さん、……及川さん、聞いてます?」
「え、なに?」
ふと我に返り、声のするほうへ視線を向ければ、訝し気な表情で道長くんが私を見ていた。
「今日の及川さん、ダメですね。朝からずっとボーッとしてますよ?」
「ごめんなさい」
職場でこんなにも集中力が欠けるのは珍しい。
さっきから道長くんに何度か呼ばれていたみたいだが、気がつきもしないなんて。
原因は自分でわかっている。
あの日、魁が私の家に来ていろんな話をしてからだ。
私の作った料理を頬張り、おいしいと言いながら満面の笑みを浮かべていた魁の顔が頭から離れない。
花束を渡したときの照れた顔も。
あれから三日が経ったけれど、この症状はどんどん重くなっていて、今日なんて仕事にならない始末だ。
『どっちつかずのままなのは、その年下くんがかわいそうですよ?』
美知留ちゃんに言われた言葉も私にのしかかってきていた。
だけど今の私はあのときとは気持ちが変わってきている。
魁にノーという返事はできそうにない。
それくらい私の中で魁の存在は大きくなっていて、彼が差し出している手を取らなければ絶対に後悔すると確信した。
魁がこんなにも私の心を満たし、支えてくれていたのだと、ようやく気づいた私はのろまで大バカだ。