全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「あれは……愛の告白かな」


 魁の反応を待ってみたが、電話口からはいっこうに声が聞こえてこない。
 通話が切れたのかと思い、スマホの画面を確認したけれど、電話は繋がったままだ。


「ちょっと、なにか言ってよ」

『えっと……とりあえず、中に入れて?』

「は?」


 私が問い返したのと同時に、ピンポンとインターフォンのチャイムが鳴った。
 半信半疑ながらもあわてて玄関の扉を開けると、そこにはスマホを握りしめたままの魁が立っていた。


「魁……どうして?」

「はぁ、はぁ……会いたいって……書いてあったから……」

「走ってきたの?!」


 うなずきながら玄関で靴を脱いだ魁は、ゼーゼーと未だに息を切らしていた。
 さっきからずっと走りながら電話をしていたのだと知り、私は驚いて目を丸くしてしまう。

 とりあえず水を用意しよう。魁はきっと喉がカラカラだろうから。
 キッチンであわててグラスに水を入れて手渡せば、彼はそれをゴクゴクと一気に飲み干した。


「一秒でも早く会いたくて」


 息を整えた魁が私と向き合い、力強い瞳で私を射貫いた。


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