全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「郁海、俺を信じてくれてありがとう」


 そんなに感謝するなんて少々大げさだけれど、私が魁を信じたのは間違いない。
 私への愛情……いや、それだけでなく、彼の人間性すべてにおいて。

 魁なら信じられる、信じてもいいと思えた。


「お礼は私が言わなきゃ。私の凍った心を根気よく融かしてくれたのは魁だから。ありがとう。待たせてごめんね」


 なんだかんだ言い訳を並べて前に進めないまま停滞している私を、大きな器で受け止めてくれたのは魁だ。
 グダグダで情けないのは年上の私で、しっかりしているのは年下の魁。結局、年齢なんて関係ないのかもしれない。


「もう……うれしくて死にそう」


 魁は一瞬天を仰いだあと、私の腕を引き寄せてギュッと抱きしめた。
 もう絶対に離さない、そう言わんばかりに強く、強く……。


「死んだら嫌だ」

「だよな。これからいっぱい、楽しくて幸せな毎日をふたりで過ごすんだからな」

「魁、大好きだよ」


 体を離して見つめ合えば、魁が顔を傾けて私の唇を素早く奪った。
 恥ずかしさから自然とうつむきそうになる私を逃がすまいとして、彼の唇が追いかけてきて掬い上げるように再びキスをする。
 息継ぎのすき間からするりと舌が侵入してきて口内をかき乱し、私の体温を徐々に上げていった。

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