全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「さすがにこの部屋には男性用の下着の買い置きはないだろ?」

「あるわけないでしょ!」

「ははは。よかった」


 駿二郎がこの部屋に来たことはない。それどころかふたりでどこかに泊まったことすらなかった。
 
 魁との恋は、それが叶うのだ。
 これからは互いの家に泊まる機会も多くなりそう。


「私のベッド、シングルだから狭いよ? 寝心地悪いかも」

「郁海を腕の中に閉じ込めるから大丈夫。ていうか、寝かせるつもりはないんだけどな……」


 ニヤリ、と冗談めかして笑った魁の顔は、今までに目にしたどの表情よりも妖艶だった。
 
 意識すればするほど、魁はひとりの男だ。


 私が作ったチャーハンをおいしいと言ってペロリと平らげ、魁は現在シャワーを浴びている。
 ここに来るまでに走ってきたから汗をかいていたし、早くさっぱりしたかったようだ。

 バスルームから出て来た魁と交代で、私もササッとシャワーを浴びた。
 部屋着を身につけ、タオルで髪を拭きながらリビングへ戻ると、魁が私を呆然と見つめる。

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