全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「郁海は結婚に興味ないの? したくない?」

「そうですねぇ……絶対にしたくないわけでもないんですけど。一度は経験してみるのもアリだと思ってますよ?」


 実際に結婚して体験してみなければ、その善し悪しはわからないだろう。自分が結婚に向いているか否かも。

 うまくいかなくて離婚になってしまったら、そのときはそれを(かて)にして、また前を向けばいいのだ。
 そんなふうに楽観的に考えている時点で、私はまだ“結婚”を理解していないのかもしれない。 


「知ってました? 日本って元々は離婚大国だったんですよ。今みたいになったのは明治以降で、江戸時代はわりと緩かったらしいです」


 とはいえ、今も日本では三組に一組が離婚している。
 結婚を継続している夫婦の中にも、離婚したいけれどできない事情を抱えている人はたくさんいるのだと思う。
 生涯未婚率が上がってきたのもわかる気がする。


「まぁでも私の場合、今のところこれといった縁がないんですけどね」


 肩をすくめてヘラリと笑えば、由華さんがニヤニヤとした意味ありげな目線を送ってきた。
 意地が悪い。全部知っているくせに。


「まだ続いてるんだね」

「はい……一応」


 私たち以外、周りに誰もいないかを確認しつつ、コソコソと会話を続ける。

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