全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~

「あれ、売り上げ実績の数字を拾ってみたか?」

「いえ……新しい企画書作りで手一杯でしたので……」

「売れ行きが芳しくない」


 そうだったのか、と途端に気持ちが落ち込んだ。
 商品はオープンシェルフとサイドテーブルだから、消耗品みたいに飛ぶようには売れないだろう。
 とはいえ、部長からこんな話をされるということは、相当売れていないのかもしれない。あとで確認してみよう。


「直営店の売り上げだけでも、もう少しなんとかならないかという話が出ているんだ」

「……そうですか」

「そこで、営業部の人間が店舗に赴いて対策を考えることになった。申し訳ないが君も一緒に行ってもらいたい」


 部長の言葉に驚いて、口を半開きにしたまましばし固まってしまった。
 ただひとつわかったのは、部長はこれを伝えるために私をここに呼び出したのだ。


「そ、それは……店舗に時折様子を見に行くという話ではなく、ですか?」

「来週から正式に店舗勤務になる」

「部長、待ってください!」


 思わず声量が跳ね上がる。
 私が正面から顔をじっと見据えると、部長はあきらかに困った表情になった。

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