全部欲しいのはワガママですか？～恋も仕事も結婚も～
「私は入社してからずっと企画一筋でやってきましたし、今もチームで遂行中の企画案があるんです」

「それは残った人間でやればいい。なんとでもなる」


　たしかにそれはそうだけれど。自分の仕事を中途半端に放り出したくはないし、そもそも私は店舗ではなく本社勤務がいいのだ。


「私も不本意だよ。君に責任を取らせるようなマネは間違っていると思っている。だからまた本社に呼び戻せるように尽力するよ。しばらくの辛抱だ」


　部長はそう言うけれど、“しばらく”ってどれくらいの期間なのかわからない。
　何年経っても本社には戻ってこられないかもしれない。そんなネガティブな思考が頭をよぎった。

　部長が「すまない」と言い逃げして部屋を出ていく。
　残された私は放心状態で、しばしその場で立ち尽くした。頭がうまく働かない。

　店舗は新入社員のころに研修として一週間働いただけなので、来週からどうしたらいいかわからない。一気に目の前が真っ暗だ。


　とりあえず部署に戻って、今やっている仕事の引き継ぎを進めた。
　申し訳ないが同じチームの峰松くんに全部託すことになる。
　部長の言うとおり、私がいなくてもなんとでもなりそうなのが悔しい。


「ちょっと郁海！　どうなってるの？」


　由華さんに『来週から店舗勤務になりました』とメッセージを入れておいたら、休憩時間に少し話そうと呼ばれた。

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