全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「由華さん、情報ありがとうございます。彼にもそのことを伝えてみます」

「すでに本人の耳に入っているかもしれない。とにかく、郁海も気をつけて」

「わかりました」


 由華さんと別れて自分の部署に戻る途中、今聞いた話の内容を駿二郎にメッセージで送る。
 するとすぐに既読がついて返信が来た。


『郁海は心配しなくても大丈夫だ。俺が収束させるから任せてくれ』


 由華さんの予想通り、彼はもうこの事態を知っていたようだ。

 もしも不倫が会社にバレたら、いくら駿二郎が優秀だとはいえ出世に響くと思う。
 彼のことだから、常務などから聞き取りをされてもいいように、いろいろと想定して考慮済みなのかもしれないが。
 “任せてくれ”という言葉通り、私は彼を信じて行く末を見守ろう。


『こういう状況だ。しばらく会えない』


 続けて送られてきた彼のメッセージで、気持ちがさらに落ち込んだけれど。
 こんなときに会うほうがどうかしているのだから、これは当然だ。

 また落ち着いたらデートできる日が来るだろう。
 
 このときは深く考えず、呑気にまだそんなふうに考えていた。

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