全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
心労と不安が重なり合う中、ある日なんの前触れもなく、私が働く直営店に駿二郎が現れた。
「お疲れ。ふたりともがんばってるな」
駿二郎は私と道長くんに穏やかな笑みをたたえて声をかけてきたけれど、道長くんは仏頂面でちょこんと会釈をするだけで、彼と目も合わさない。
「本部長、お疲れ様です。……今日はどうされたんですか?」
「この近くで商談があったから、ここの様子を見に寄っただけだ」
彼はいつものように落ち着きはらっていて、私と道長くんを前にしても動揺する気配はまったくうかがえない。
駿二郎はそういう人だった。良くも悪くも、いつも肝が据わっている。
店長と共に店内をあちこち見て回り、一通り仕事の話を終えた彼は、そのまま店を出て行ってしまった。
チャンスは今しかない、と即座に頭が働き、気がついたときには私の足は駿二郎を追いかけていた。
「本部長! 待ってください」
店舗に隣接している駐車場で声をかけ、彼を捕まえる。
今、駿二郎はひとりだ。周りに誰もいないこの好機を逃してはいけない。
「お疲れ。ふたりともがんばってるな」
駿二郎は私と道長くんに穏やかな笑みをたたえて声をかけてきたけれど、道長くんは仏頂面でちょこんと会釈をするだけで、彼と目も合わさない。
「本部長、お疲れ様です。……今日はどうされたんですか?」
「この近くで商談があったから、ここの様子を見に寄っただけだ」
彼はいつものように落ち着きはらっていて、私と道長くんを前にしても動揺する気配はまったくうかがえない。
駿二郎はそういう人だった。良くも悪くも、いつも肝が据わっている。
店長と共に店内をあちこち見て回り、一通り仕事の話を終えた彼は、そのまま店を出て行ってしまった。
チャンスは今しかない、と即座に頭が働き、気がついたときには私の足は駿二郎を追いかけていた。
「本部長! 待ってください」
店舗に隣接している駐車場で声をかけ、彼を捕まえる。
今、駿二郎はひとりだ。周りに誰もいないこの好機を逃してはいけない。