全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「じゃあ、この飲み物代だけお願いします」
ほのかさんがテーブルの上の会計が書かれた紙を指さして言う。
私はもう一度深く頭を下げ、それを自分のほうへ引き寄せた。
「でももしかしたら……夫は及川さん以外の誰かとも不倫中かもしれないですね。そんな気がします」
その言葉で瞬時に土屋さんの顔が頭に浮かんだ。本当に駿二郎は女性にだらしない。
しかし、奥さんの勘の良さはさすがだ。
そうは思うものの、私から土屋さんの存在を喋るわけにもいかないので、そのまま口を閉ざしておいた。
「もし気になるようでしたら、本部長に直接尋ねるのがいいと思います」
「あの人に聞いても、そんな相手はいないと否定されるだけでしょう?」
「そうですけど、奥様の発言をきっかけに相手と関係が切れるかもしれませんし。……すみません、ほかにも女性がいたら、の話ですけど」
余計な発言をしてしまったと瞬時にわかったが、後の祭りだった。
なんとか誤魔化しつつも、額から汗が噴き出してくる。
土屋さんには悪いが、駿二郎とは別れるべきだ。
自分が別れたから妬んでそんなふうに考えたのではなく、彼には奥さんと築いている家庭があるのだから。
不妊治療を乗り越えて二人目を妊娠したほのかさんには、母としても妻としても幸せになってもらいたい。
モテる駿二郎の手綱を今後も引いていくのは大変だろうけれど。
ほのかさんがテーブルの上の会計が書かれた紙を指さして言う。
私はもう一度深く頭を下げ、それを自分のほうへ引き寄せた。
「でももしかしたら……夫は及川さん以外の誰かとも不倫中かもしれないですね。そんな気がします」
その言葉で瞬時に土屋さんの顔が頭に浮かんだ。本当に駿二郎は女性にだらしない。
しかし、奥さんの勘の良さはさすがだ。
そうは思うものの、私から土屋さんの存在を喋るわけにもいかないので、そのまま口を閉ざしておいた。
「もし気になるようでしたら、本部長に直接尋ねるのがいいと思います」
「あの人に聞いても、そんな相手はいないと否定されるだけでしょう?」
「そうですけど、奥様の発言をきっかけに相手と関係が切れるかもしれませんし。……すみません、ほかにも女性がいたら、の話ですけど」
余計な発言をしてしまったと瞬時にわかったが、後の祭りだった。
なんとか誤魔化しつつも、額から汗が噴き出してくる。
土屋さんには悪いが、駿二郎とは別れるべきだ。
自分が別れたから妬んでそんなふうに考えたのではなく、彼には奥さんと築いている家庭があるのだから。
不妊治療を乗り越えて二人目を妊娠したほのかさんには、母としても妻としても幸せになってもらいたい。
モテる駿二郎の手綱を今後も引いていくのは大変だろうけれど。