全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「私と付き合いたい、ってこと?」

「ああ」

「魁は若いけど私は三十七なの。そこ、わかってる?」


 四十三歳の駿二郎と付き合うのは年齢のコンプレックスを感じないで済むけれど、相手が魁なら常に意識してしまうだろう。
 私の中では“年下”よりも“既婚者”のほうがハードルが低いのかな? それもどうかしている。


「年齢がそんなに重要? その人間の“生まれてから今までの時間”っていうだけで、単なる数字でしかない」

「それは魁が若いから言えるのよ」

「十歳差は俺がどんなにがんばっても詰められない。でも、そこにこだわる必要はないだろ」


 魁はきっと、美知留ちゃんと価値観が似ている。
 同じ場所に停滞していて、どっちに進んだらいいかわからずにいる私と接すると、まどろっこしくてむずむずするのだと思う。


「私ね、失敗するのが年々怖くなってる。恋愛も、真剣であればあるほど、ダメになったときにつらいもの。だから逃げ腰なのよ」


 誰かと真剣に付き合って、心酔して……その結果失恋してボロボロになるのは嫌だった。
 それならば、終わりが来ても涙も出ないような、もっとライトに付き合える相手がいいと考えていた。楽なほうに逃げていただけだ。

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