全部欲しいのはワガママですか？～恋も仕事も結婚も～
「魁とは、付き合ってダメになりたくないの。昔からの知り合いだから。恋愛して別れるくらいなら、ずっと友達でいたほうがいい」

「なんでそうなるんだよ……」


　魁はただの“年下男子”ではないのだ。
　母親同士が友人関係という縁でも繋がっている。
　もしも別れるとなれば、元々の縁まで経ち切ってしまうことになりかねない。


「ちょっと考えさせて？　魁もよく考えてほしい」


　すぐに答えを出さなくてもいい。
　時間を置けば、今よりも冷静な判断ができるかもしれない。


「俺は郁海の恋人になりたいし、思いっきり恋愛がしたい。ブレずにそれ一択だ」


　なんだかんだ言い訳をして先延ばしにするのは、私がよくやる手法だ。
　母には通用していたが、どうやら魁は逃がしてくれないみたい。


「じゃあ“恋人未満”から始めよう。ちゃんと俺を好きになってくれるまで待つから」

「それで……いいの？」

「いいよ。そのあいだも俺は郁海にアピールし続ける」


　恋人未満の関係、か。
　あいまいで中途半端な感じが、すごく私らしくてちょっと笑える。

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