Come Fly With Me

思わぬ必要性

形だけだからと言えば仕方がない。

会話も夫婦と言うよりも、上司と部下と言った方が正しいのかも知れない。

利害関係の一致で結婚したと言う訳なんだけど、
「…何か寂しいものがあるよね」

お昼のピークも終わり、テーブル席の紙ナプキンの補充をしながら私は呟いた。

もうちょっと胸キュン要素的なものがあってもいいんじゃないかと思うんだけどな…。

そんなものを形だけの結婚に、何より荒巻さんに求めても仕方がないんだけど。

そう思いながら次のテーブル席の紙ナプキンの補充をしていたら、
「あの…」
と、誰かに声をかけられた。

お客さんがきたみたいだ。

「はい、いらっしゃいませ」

その人の顔を見た私は、
「お久しぶりです、竹内さん」
と、声をかけた。