Come Fly With Me
「いえ、何も…」

私は返事をすると、荒巻さんから離れた。

「宮脇さん」

リビングを出ようとした私に、荒巻さんは名前を呼んだ。

「はい?」

彼が私のことを呼んだのは今日が初めてだ。

「あの、何か…?」

そう声をかけた私に、
「宮脇さんは俺と結婚したことをどう思っている?」
と、荒巻さんが聞いてきた。

「えっ?」

何を言っているんだ、おい。

「別に、何にも思っていませんが…」

そもそも何が言いたいんだ、おい。

えーっと、これはあれか?

「荒巻さん、別れたいと思っているんですか?」

どうせ形だけの結婚だし、離婚しても特に問題はないと思うけど。

そう思いながら荒巻さんに聞いたら、
「…そうか」

彼はそう言っただけだった。

何だったんだろう?

私は首を傾げると、自室へと足を向かわせた。
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