初恋ラストレター
 何日か経ち、学校帰りに公園へ立ち寄った。遊具で遊ぶ子どもたちと、ちょうどすれ違う。小学生の時間が終わる頃、私の時間が始まる。

 まばらな足音が遠退いていき、辺りの音はなくなった。海賊戦の手前で、なんとなく足を止めていたら、風に乗って新しい音が聞こえてくる。

 歌声だ。
 口ずさむようなメロディは、なめらかで優しくて、儚げなのにどこか力強い。胸がギュッと締め付けられて、心の奥に染み込んでくる。

 思わず聞き入ってしまった。気づけば歌は止まっていて、海賊船の中からぴょこんと飛び出てきたウミちゃんこと宮凪海(みやなぎかい)くんが私の前へ立つ。

「なんだ、蛍いたんだ。声かけてよ」
「……ごめん、なさい」

 手紙交換をしていたと言っても、すぐに慣れるわけじゃない。こうして何度か会っているけど、紙を通さず直接話すのはまだ緊張する。

 目を合わせられず、うつむき加減になると、少しばかり探るような声色で。

「もしかして、聞こえてた? 歌」

 確信は持っていないけど、もしかしたらと言いたげだ。
 知らないふりもできたけど、私はこくんとうなずく。今でも胸の中が余韻であふれていて、なかったことにしたくなかった。

「洋楽……歌えるなんてすごいね」
「ただの耳コピだよ。間違えまくってると思う」

 ハハッと軽く笑う宮凪くんは、思いのほか楽しそう。歌声を聴かれたくないのは、私だけなのかもしれない。

「上手く言えないけど、すごかった……!」
「いい歌だろ? 俺、この歌好きなんだ」
「心に、響いて、切なくなる歌」
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