初恋ラストレター
 約束をしているわけじゃない。ただ、帰りに公園へ寄ると必ず宮凪くんが来る。私の方こそ、まっすぐ帰ればいいのに、足が向かうのはどうしてかな。
 今日だって、学校は休みなのにわざわざ出向いてしまった。

「ほら、これ」

 見せられたのは、この前の子猫が写った画像だった。引き取ってくれた人が、SNSに載せているらしい。

「こいつの名前、なんだと思う?」
「えっ、分かんないよ」
「ネコ太だって」
「……かわいい」
「うそだろ……? ネコ太だぞ? どう聞いてもセンスねぇだろ」

 あまりに驚いた声と表情だったから、思わず吹き出してしまう。

「ちょっとは思ったけど、否定するのは失礼かなって」

 くすくすが止まらないでいると、宮凪くんが隣でネコ太の画像をスクロールしていく。仰向けに寝転んだり、おいしそうなご飯をもらっている。
 幸せそうな姿に、こっちまで胸が温かくなる。

「運命って分かんないよな。捨てられてるのがここじゃなかったら、俺たちが見つけてなかったら、この人が引き取ってくれなかったら。ネコ太は、今生きてないかもしんねぇじゃん」

 動きの止まった指先を、じっと見た。
 たしかに、宮凪くんの言う通り。全ての小さな奇跡が重なったから、ネコ太は今を生きている。

 なにげなく過ごしている毎日でも、少しの勇気で変えられるものがあるんだ。
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