初恋ラストレター
***
「あと一人、誰かやってくんないかなぁ?」
教卓の前で、腕組みをした三浦先生が頭を抱えた。みんな視線を合わせないように、しらっとした顔をしている。
再来週に控えた合唱コンクールのオーディションへ向けて、急遽、実行委員を決めることになった。クラスのまとまりがないことに、先生が焦りを感じているらしい。
すでに立候補で決まった真木さんが、黒板の前で教室を見渡している。
仲良くしている子たちも、面倒だからとやりたくない素振り。私もやりたいわけではないけど、先生も困っているし、真木さんと話す機会が増える。
気持ちでは手を上げようと思うのに、その一歩が踏み込めない。
真木さんと目が合った。他の人が前を見ていないからなのか、じっとこっちへ視線を向けている。
小さく唇が動いて、何か問いかけているみたい。
……やる?
挙げたそうな手に気付いてか、真木さんはそう言っていた。
「よーし。今日は五月七日だから、出席番号十二番に任せる」
「え~、わたし? 十二全然関係ないし!」
「足し算よ、足し算」
「意味不明。サイアクなんですけど~」
私の後ろの席で、真木さんと仲良くしている子が嘆くような声を上げた。自由時間が減ると、ぶつぶつ文句を吐いている。
今、代わると言えば、まだ間に合う。振り向いて、声を掛ければ──。
少しだけ傾けた体は、通り過ぎていく彼女と一緒に前を向いた。
結局、なにも出来なかった。変われないまま、一日が過ぎていく。
「あと一人、誰かやってくんないかなぁ?」
教卓の前で、腕組みをした三浦先生が頭を抱えた。みんな視線を合わせないように、しらっとした顔をしている。
再来週に控えた合唱コンクールのオーディションへ向けて、急遽、実行委員を決めることになった。クラスのまとまりがないことに、先生が焦りを感じているらしい。
すでに立候補で決まった真木さんが、黒板の前で教室を見渡している。
仲良くしている子たちも、面倒だからとやりたくない素振り。私もやりたいわけではないけど、先生も困っているし、真木さんと話す機会が増える。
気持ちでは手を上げようと思うのに、その一歩が踏み込めない。
真木さんと目が合った。他の人が前を見ていないからなのか、じっとこっちへ視線を向けている。
小さく唇が動いて、何か問いかけているみたい。
……やる?
挙げたそうな手に気付いてか、真木さんはそう言っていた。
「よーし。今日は五月七日だから、出席番号十二番に任せる」
「え~、わたし? 十二全然関係ないし!」
「足し算よ、足し算」
「意味不明。サイアクなんですけど~」
私の後ろの席で、真木さんと仲良くしている子が嘆くような声を上げた。自由時間が減ると、ぶつぶつ文句を吐いている。
今、代わると言えば、まだ間に合う。振り向いて、声を掛ければ──。
少しだけ傾けた体は、通り過ぎていく彼女と一緒に前を向いた。
結局、なにも出来なかった。変われないまま、一日が過ぎていく。