初恋ラストレター
 何を言われているのか理解出来なくて、数秒経ってから。

「私の……時間?」
「俺のやりたいこと、叶えてくれるんだろ? だから付き合って」
「あっ、それはぜひ、協力させてください!」

 頭を下げると、プッと吹き出す声がした。

「急にかしこまりすぎ。じゃあ、十時に駅で待ち合わせな」

 会う約束をして、私たちは公園を出た。夕焼け雲が消えて、空は夜になる準備をしている。
 振り向きかけた顔を戻して、少しだけ歩幅を大きくした。

 もしも、宮凪くんが背を向けていたら、胸が張り裂けてしまいそうだから。
 もしも、宮凪くんと目が合ったなら、心臓がもちそうにないから。

 傷付かないために、これ以上深入りしてはならない。

 宮凪くんの役に立つために、任務を遂行することだけを考えなければと言い聞かせて、土曜日を迎えた。

 最寄り駅のトイレの鏡に立って、かれこれ十分近くは経過している。何度覗き込んでも変わらない前髪を直して、もう一度リップを塗った。
 服装にも気を使った。中学生のファッションをひたすら検索して。

 今日は、宮凪くんのやりたいことに付き合うだけ。舞い上がってはいけない。
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