初恋ラストレター
 暗闇を走る電車の中で、ぐずぐずと鼻をすする。通り過ぎていく景色を眺めながら、宮凪くんの言葉を思い出しては涙が押し寄せた。

 多いってことは、少なからずよくならない人がいるわけで。想像してしまったら、不安しかない。

 人目もはばからずと飽きられそうだけど、止まらないものは仕方ない。

「もう泣くなって。俺はまだ死なねぇし、死ねない。蛍とやりたいこと、いっぱいあるし」

 電車が動くたびに肩がぶつかる。窓を向いたままの宮凪くんの手が重なって、ぐわんと心臓が揺れた。

 かばんでスマホの鳴る音がする。たぶん、お母さんだ。早く帰って来なさいと催促の連絡だろうけど、私は瞼を閉じて無視した。ごめんなさいと、心でつぶやいて。

 最寄り駅につく頃、迎えに来てほしいと返事をした。すぐ既読になって、『今から行く』とだけ返ってきた。

 宮凪くんが一緒に待ってくれて、駅裏へ向かう。冷静になって考えたら、取り乱して困らせていたなと思う。大変なのは、宮凪くんなのに。

 街灯の少ない裏側は、ほとんど人の気配もない。野良猫が通り過ぎて行く以外は、誰も。

「今日はありがと。久しぶりに楽しかった」

 先に沈黙を破ったのは、宮凪くんだった。
 まだ迎えは来ていないけど、別れの台詞を告げられて寂しさが押し寄せる。


 ──もう、今日が終わってしまう。
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