初恋ラストレター
 学校が終わって、公園へ向かう足取りが重くなる。一昨日の今日で、顔を合わせづらいと思っていたところに、あんな噂を聞いてしまったから。

 遊具から降りて、遊んでいた小学生たちが帰っていく。海賊船の中へ潜り込むと、新しいメッセージが貼られていた。

《しばらく来れない。ごめん》

 そっけない文字に、胸が締め付けられる。
 今までにも、会えない時はこうして手紙を置いていた。なにも特別なことじゃない。

 私たちは、お互いの連絡先を知らない。
 交換しようと言われたことはなく、こっちからは聞きづらくて、気づけば何日も経っていた。
 ここへ来たら、会える。そんな暗黙の了解が、私たちの間にはあったから。

 見慣れた字をなぞりながら、目頭が熱くなる。

「ねぇ、どうしてこのタイミングなの? 宮凪くん──」

 会いたい。顔を見て話したら、安心出来る気がした。私にくれた言葉も優しさも、キスも全部、本物なんだって。

 茜色の空が街を覆い始めて、遠くでカラスの鳴き声がする。手紙をそっと鞄へしまって、海賊船を出た。
 信じているのに、心の波は大きくなっていく。


 家へ着くと、母が困ったような顔をしてため息を吐いた。寄り道をして来なかったかの質問に、控えめにうなずく。
 ここのところ帰りが遅かったことを心配して、一ヵ月の外出禁止令を出されていた。
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