初恋ラストレター
「カイ、前に紹介してやった子どうだった? レベル高かったろ?」

 タトゥーの少年が煙を吐くと、宮凪くんはハハと笑いながら「そうっすね」と反対を向いた。

「お前は顔が良いから得だよな。まっ、オレも負けねぇけど」

 うなずく女の子の目が、宮凪くんを見つめていることにひどく動揺する。


 ……違う、知らない。この人は、私の知る宮凪くんじゃない。


 来た道を夢中で戻った。早く遠ざかりたくて、走りながら水の玉を散らせる。ぼやけて前が見えなくても、震える足を踏ん張って進んだ。

 真木さんのことも忘れて、気づけば駅の前へ辿り着いていた。
 まだ胸が激しく動いている。呼吸は整うことなく、頭の中を乱す。
 階段の下で、しゃがみ込んだらもう立てそうにない。

 信じたくない。宮凪くんが、悪そうな人たちといたこと。他の女の子と、会っていたなんて。

 少し遅れて、真木さんが隣に立った。跳ねた髪を手ぐしでとかしながら、少しためらった口調で段に腰を下ろす。

「……大丈夫?」

 反応しない私をのぞき込んで、ああ……とばつの悪そうな表情をした。涙まみれのひどい顔だったからだろう。
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