初恋ラストレター
 何を言われるのか。胸がキュッと冷たくなった瞬間、後ろから誰かに腕を引かれた。

「蛍、待った?」

 驚いて見上げたら、ふわっと髪をなびかせた宮凪くんが立っている。いつものラフな格好でも、オーラがひときわ目を引く。

「え、宮凪海?」
「マジかよ……ありえねぇ」

 同級生の男子たちは、気まずそうにして立ち去って行った。
 あの子たちも、宮凪くんのことを知っているんだ。違う中学校なのに、そんなに有名なのかな。
 それより……。

「どうして」

 宮凪くんがここにいるのだろう。

「なんか困ってそうだったから。あ、余計なことした?」

 本屋から出ながら、チラリとのぞき込む宮凪くんに、ううんと首をふる。
 あの空気から抜け出せてホッとした。腕を掴まれたのは、まだドキドキしているけれど。
 ふわりふわりと足がよろけて、転びそうになった。一気に緊張が解けて、力が入らない。

 植木の近くで腰を下ろす。
 思い出すだけでも、まだ怖い。小学生の頃は、嫌なことを言ったりされたのに。月日が経つと、あんな風に普通に話せるものなのかな。私には、理解も会話も難しい。

「……ありがとう。宮凪くんがいてくれて、助かった」

 自分の手を握りしめながら、心を落ち着かせる。
 少しずつ変われてきたと思っていた自分が、一気に崩れていくみたい。不安が全部を消していってしまう。

「蛍だって、この前来てくれただろ? お互いさま」

 気にしなくていい。そう笑ってくれた宮凪くんのおかげで、しゃがみ込んでいた私は立ち上がれた。
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