初恋ラストレター
 七月も中旬に入って、アスファルトの照り返しが強くなった。滑り台やブランコも、昼間は沸騰したように熱いからか、夕方でも親子の姿が見られるようになった。

 あの日以来、放課後は毎日公園へ立ち寄っているけど、宮凪くんの姿はない。最初の二日間は、来てくれていたはずだ。

《前から聞きたかったんだけど、蛍も出たりする? 合唱コンクール。出場校の中に、聖女の名前あったから》

 このメッセージを見たときは、心臓が止まるかと思った。まさか、宮凪くんの口から合唱コンクールの話題が出ると思わなかったから。
 それに、天王中学校も参加するなんて、知らなかった。私が、しっかり確認していなかっただけなのだけど。

《たぶん、私は出ないと思う》

 私は嘘をついた。
 大勢の前で歌自信がないのと、当日、突然の腹痛で欠席するかもしれない。そのつもりだったから、そう書くしかなかったの。

《つまんねぇー。会えるかと思ったのに》

 海賊船には《宮凪くんは出るの?》と二週間前の質問が残されたまま、時が止まっている。
 どうしちゃったんだろう。なにか、気に障ることでもしたかな。

 頭を(ひざ)に埋めると、つんつんと腕を突かれた。ハッとして顔を上げると、小学三、四年くらいの子が立っている。
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