初恋ラストレター
 私が輪飾りを作る間に、五十羽ほどある鶴を集め、真木さんと伊波くんが繋ぎに取り掛かった。
 細かい作業だから、なかなか上手く出来なかったようで、伊波くんと交代しながら糸を通して折ってを繰り返した。

「オレ、ずっと海と話したかったんだ。でも、そんな雰囲気になれなくてさ。病気も知らなかったから、こうゆう機会を作ってくれた春原さんには、すごく感謝してる」

 折りながら、伊波くんがしみじみと言う。初めは、唐突なお願いで不審に思われないかと心配だった。
 でも、宮凪くんへ募る気持ちがあるのは、私だけじゃないと知れた。

「成功したら、お互いに伝えたいことを言いましょう」
「おう。春原さんが集めた想いが詰まってるから、海は絶対良くなる!」
「……はい!」

 集まってから二時間が経過した頃には、みんなの口数も減って、ため息の漏れる音だけが落ちる。同じ作業ばかりで、疲れが蓄積されてきたのだろう。

「あとは、私に任せてください」

 机に伏せる二人から、繋げた鶴を集める。五つの束をひとつにまとめて、最後にしっかりと結び上げた。グラデーションの美しい百羽鶴は、特別な存在感を放っている。


「完成だ──!」

 私と真木さんは声を上げて抱き合い、伊波くんは失神したように床へ倒れ込んだ。
 クーラーの風で揺れる百羽は、まるで波打つ海を泳いでいるみたいで、なんでも願いが叶うような気になれた。

「ほんとに、ありがとう。みんな、ありがとう」

 ぽろぽろとこぼれ出す私の涙を拭って、真木さんが「よく頑張った!」と笑う。その瞳は、星を散りばめたようにきらきらと潤っていた。
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