雪のとなりに、春。
「伝えたいことがある人に伝えられる時間は、限られとるからの。遠くに行ってしまったら、もう伝えられないのじゃよ」


おじいちゃんみたいな語尾がなければもう少し感動したと思う。
それでも、私の心に間違いなく響いた。

……この店員さんは、伝えられたのだろうか。


「さて、花束かアレンジメントか、どっちにする?」

「え、えっと」

「花束はその人の家に花瓶があること前提ネ。あときちんと花の手入れができる人。逆にアレンジメントならただ水あげたらいいから楽」

「ど、どっちも!!」

「……くふ」


そーいうの僕いいと思うヨ。

そう言って笑った不思議な店員さんは、なんと私に自分で花を束ねさせてくれた。
申し訳ないと思っているのが知られているみたいに「今日は平日でお客さんも来ないし」とニコニコされてしまう。

アレンジメントはさすがに時間がかかるので、ある程度仕上げられたものに私が手を加えさせてもらった。

私の話を聞いた店員さんが、候補の花一覧を見せてくれて。

色や名前、そして大切な花言葉を重視して選んだ。
店員さんがなんでも「いいと思う」と言って笑ってくれるので、なんだか自分が花に詳しいすごい人になったんだと錯覚してしまいそうになる。

夢中で花束とアレンジメントを作っていたら、あっという間に夕方になってしまった。

店員さんも手伝ってくれてなんとか納得のいくものに仕上がる。
花束が2束、フラワーアレンジメントが1つ。

さすがにお値段もそこそこになっていたが、なんと店員さんがおまけで割引をしてくれてお得に購入できた。

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