雪のとなりに、春。
「帰り道大丈夫?」

「あ、多分……バス停って近くにありますか?」

「この辺入り組んでるからにゃー……バス停まで送っていこうか?」


とてもありがたいお話なのだが、これ以上店員さんに迷惑をかけるわけにもいかない。
何一つ自信なんてないくせに「大丈夫です!!」と元気に返事をしてしまった。


「それじゃあ私はこれで!! 色々とお世話になりました。また来ます!!」

「ばいなら」


それだけ言ってひらひらと手を振る店員さんは、最後まで不思議で、最後までつかめない人だった。

お店を出て、とりあえず広い道を進む。
大通りに出たらバス停の1つや2つ見当たるだろうという考えだ。

ちょっと疲れたのかもしれない。
細かいことを考えるのがいつも以上に億劫だった。


「……あれ、カノ?」


気のせいでしょうか。

聞き慣れた声に名前を呼ばれて、心底ほっとして声のした方を見る。
道路を挟んで反対側の歩道にその人はいた。


「し、信濃くん!!!!」


あああ、よかった!!

正直どうしようかと思ってたんです!!

今からでもお店に戻って「やっぱりバス停まで案内してもらってもいいでしょうか」と恥を忍んでお願いしに行こうか悩んでたんです!!

左右を確認した信濃くんが、軽い足取りで駆けてきてくれた。
赤みの強い髪の毛がぴょこぴょこと跳ねている。


「お前、どうしたんだよこんなところで」

「じ、実はですね……」

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