雪のとなりに、春。
「……あ、バス来たな」


信濃くんの言葉に、自分が時間を忘れて信濃くんとの会話を楽しんでいたことに気付く。
ほっとついた息が少し熱かった。


「本当に一緒に行かなくて平気か?」

「うん、さすがに迷ったりはしないから大丈夫!! まっすぐ雪杜くんの家に行くんだ!!」

「いや……うん、そっか。マジで気をつけてな」


もう。
雪杜くんも環くんも、それに信濃くんまで。

「もう!」と言ってしまいたかったけれど、現にこれだけ人に迷惑をかけているのでさすがに「心配しすぎだよ」とは言えなかった。

代わりに「ありがとう」と笑顔で答えて、バスに乗り込んだ。

バスが発車して、見えなくなるまで手を振ってくれる信濃くんに私も手を振り返した。


「……ふう、今日はなかなか大変だったなあ」


まだサプライズは終わっていないのに、急にどっと疲れに襲われる。

家に来て欲しくなさそうだったけど、少しだったらお邪魔してもいいよね?

渡すだけ、だから。

喜んでくれるといいな。
笑ってくれるといいな。

早く雪杜くんの元へ行きたいような、行きたくないような。

さっきまで感じていた疲れなんてどこかに行ってしまった。
代わりに楽しみがあっさり勝利して、鼓動もずっと早くなる。


雪杜くん、待っててね。
今行くからね。
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