雪のとなりに、春。
6 大丈夫。待ってて
***

金曜日ということもあり、週末を楽しまんと多くの人が表通りを出歩いていた。
下校してきた学生も友達とのおしゃべりを楽しんでいる。

たった数時間出かけていただけなのに、自分の住んでいるところに帰ってきた安心感でほっこりする。


「よし、私も!!」


花束とフラワーアレンジメントの入っている紙袋をきゅっと抱きしめ、反対の手で目の前のインターホンを押した。

――ピンポーン……


雪杜くん、びっくりするかな。
びっくりするだろうなあ。

驚く好きな人の表情を想像してると、おかしくなって笑みが口角に浮かぶ。


『……ちょっと、先輩、なんで来たの』


機械越しに聞こえてきた雪杜くんの声は、静かでなんだか新鮮で更に口角が上がる。
ああ、早く渡したいな。
早く会って「ありがとう」って伝えたいな。


「あ、あのね、雪杜くん、どうしても直接話したいことがあって」

『今、出られない。そのままじゃだめ?』

「え、あの、少しでいいんだけど……」

『……無理、ごめん』


すぐ目の前にいるのに?

そりゃあまだ家に来て欲しくなさそうだったのに気付きながら、勝手に来ちゃった私も悪かったけど。

……今インターホン越しで話してるのに、会えないの?

心が突き刺されるように苦しい。

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