雪のとなりに、春。
「待って、先輩、皐月と会ってたの?」

「皐月!?」

「……あー……」


あ、今めんどくさそうな顔した。


「オレ、雪杜皐月。よろしくね、カノチャン」

「ゆきもり……ってまさか」

「カナメのお兄チャンでーす」

「…………」


まさか。

あの奏雨ちゃんのお兄さんが、こんなに変態な方だったとは。
どれだけ目を大きく開けても信じられない。

それに、私の知っているお兄さんとも全然違う。

声も、話し方も、雰囲気も。


「ごめんね? 二度びっくりだね? そりゃあ声も出ないね?」


私の考えていることなんて全部見透かされてしまっているみたいにくっくと笑う。
皐月さん……この人が本当に奏雨ちゃんのお兄さんなの……?


「あ、あの、皐月さん」

「はあい」

「その、どうして奏雨ちゃんの格好で雪杜くんの家に……?」


聞きたいことは山ほどある。
でも、まずはこれだ。

不思議だけど危なくて、気を抜いてはいけないような怪しげな雰囲気。
笑ってはいるけれど目は鋭く私をとらえたまま。

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